神社a
◎「久久比神社」
兵庫県豊岡市下宮318-2 地理院地図
主祭神:久久能智神・天湯河板挙命
相殿:大国主命・多紀理比売命
境内社:八幡社:祭神事代主命
稲荷社:祭神保食神
三柱社:祭神少彦名命
(久久比神社)

(久久比神社)

・鳥居の先に「割拝殿」がある。
(久久比神社 割拝殿)

(久久比神社 割拝殿)

・由緒書きが掲げられている。
(久久比神社 境内)

・正面に拝殿、右に八幡社、左に稲荷社と三柱社
(久久比神社 拝殿)

(久久比神社 本殿)

(久久比神社 本殿)

(久久比神社 本殿)

・龍の彫り物
(久久比神社 本殿)

・扁額には「胸形大明神」
(久久比神社 境内案内1)

(久久比神社 境内案内2)

(久久比神社 本殿案内)

(久久比神社 境内社)

・稲荷神社と三柱神社
(久久比神社 境内 八幡神社)

(久久比神社 境内 八幡神社)

(久久比神社 境内 八幡神社)

「久久能智神」(古事記)・「句句迺馳」(日本書紀)は木の神であり伊耶那岐神・伊耶那美神が生んだ神であるが、なぜククノチというのかはわかっていない。
久久比神社では久久比はコウノトリのことだという。近くにコウノトリの郷公園がある。地理院地図
明治期乱獲により留鳥であったコウノトリは一度は絶滅した。
江戸期豊岡藩はコウノトリを保護してきた歴史があり、渡ってきたコウノトリを捕獲し、この地に放鳥保護し現在全国で300羽まで回復してきているという。
- 久久比・久久能智から、久久というのはコウノトリの事を指すのだろうと思われる。
コウノトリは鳴かない鳥であるが、クチバシを叩き合わせて音を出しコミュニュケーションをとる。これをクラッタリングというが、その音を久久で表したものであろう。
[比]は象形で2つが並んだ様子であるから、「久久比」というのは二羽のコウノトリが並んでクラッタリングする姿を呼んだものと思われる。
・[鴻]は大きな鳥という意味を持つがコウノトリというのは「鴻ノ鳥」すなわち大きな鳥というのがその意味なのだろうと思われる。
・コウノトリを[鵠(クグイ)]と表す例がある。クグイは今では大型の白い鳥のことを意味する。
オオハクチョウや、タンチョウヅルもクグイと呼ばれる。コウノトリが白い鳥であることから大白鳥や丹頂鶴もクグイと呼ぶようになったのであろう。
・コウノトリは漢字で[鸛]と書く例がある。これは音でカン。中国での呼び名であろう。
・コウノトリは樹上に巣を作る。これが木の神に関わりがあると思われる。
・コウノトリは大型の鳥であるため助走なしで飛び立つのは苦手である。樹上の巣から飛び立つ時、向かい風を待ち受け大きく羽根を広げ風を受けて浮き上がり、巣を離れ滑空していく。
「迺」は(そこで)「馳」は(はせる・ジャンプする)。句句迺馳というのはコウノトリがその巣のある場所から飛び立つことを意味している。それが樹上であるから木の神とされたのであろう。
- 本殿は三間社流造で「胸形大明神」の扁額があることから、本殿が作られた際には宗像三比賣を祭っていたのであろう。
- 大宝元年(701)文武天皇の時、この地方の郡司物部韓国連久々比命が亡くなり、それを祀ったのが久久比神社の創建縁起であるという説がある。
物部氏には鳥獣名をその名とする例があり、物部久々比もそうした例であろう。それが久久比神社の創建縁起というのは訝しい。
かつては下宮地区には上ノ宮(敷井谷鎮座)に大国主命、下ノ宮(田中大明神)に多紀理比売命を祀っていたが久久比神社に合社されたという。
境内各社の祭神が通常とは異なっているが変遷の過程で混乱してしまったのであろう。
一応記しておくと、次のようであったと思われる。
・八幡神社:誉田別尊
・稲荷神社:宇迦之御魂神
・三柱神社:保食神・少彦名命・事代主命
出雲には「求院八幡宮」境内に「鵠神社」があり、」記紀の話を伝えている。
- 祭神の「天湯河板挙命」というのは変った名である。
コウノトリを捕まえたという場所が出雲の宇夜池と伝えられており、近くには因幡の八上姫に関係する湯の川温泉がある。
宇夜地区はかつては入江であり、宇夜池は権現山(鷹巣山)の山裾にあったのであろう。
「天湯河板挙命」というのは、湯の川温泉近くの棚田の池でコウノトリを捕まえたことに由来する名付けなのであろうと思われる。
古事記で各国を回りようやくコウノトリを捕まえたという話は信じがたい。
天湯河板挙命は捕まえたコウノトリを後に故郷に連れ帰ったと伝えられるから豊岡が故郷だったのであろう。