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知波夜比古・知波夜比売

広島県三次に知波夜比古神社・知波夜比売神社というのが、それぞれある。


知波夜比古・知波夜比売というのはどこにも出てこない神格なのだが、これが良く解らない。日子穂穂出見命或いは天鈿女命の別称と考えるのも奇妙だ。
そもそも「ちはや」とは何かということも問題だ。
折口が、「ちはやぶる」の語原は「いちはやぶる」と記しているが、この場合の意味は猛々しいというようなことを示し、
枕詞として用いられる「ちはやぶる卯月」という場合には不適応だ。
「千早」は巫女の羽織をこう呼ぶが、「千早振る」であれば、羽織を振る、則ち神舞いを顕わし、卯月にこれを行うと云えば、田植えの神事を指すのであろう。
とすれば、知波夜比古・知波夜比売はこの地方の地主神で、農業神と考える方が素直に思える。
男神は雄々しく耕し、女神は山から水をもたらす。そういう想いが込められている命名なのではあるまいか。
穂穂出見が稲苗の象徴化であり、天鈿女がこれを守る女神となぞらえれば、
各宮主祭神の位置づけも納得がゆく。
又、この地方に伝わる穂穂出見の降臨説話は、他所からこの地方に稲作がもたらされた事を伝承しているのだと考えれば得心できる。
ちなみに知波夜比古神社は周辺に稲田が拡がる丘陵地帯にある。


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