神名解題a

「豊国主尊」

豊国主の尊には多くの異名がある。
古事記では、豊雲野神
日本書紀では、
 本文 …豊斟渟尊
一書の一…豊国主尊・豊組野尊・豊香節野尊・浮経野豊買野尊・豊国野尊・豊齧野尊・葉木国野尊・見野尊

異名が多いのは、丁度、大国主尊の異名が多いのと同様に、重要な神格であるからに違いない。
それ故、私はこの神が最初の人神だと考えているのである。
豊国主というのは、個人名ではなく職名だろう。
多くの異名の内の幾つかは、個人名であるかもしれない。

この神は、日本列島内で初めて出現した国、即ち「豊国」の首長である。
豊国は、さほど大きな国ではなく、その中心は福岡県行橋市周辺であったと考えている。
但し、関連地域はかなり広範で、北は山口県の豊北町から南は大分県臼杵辺り迄で、
後の豊前・豊後・長門を含んでいたように考えている。
というのも、この地方が、大陸との交易の重要地域であるからである。
玄界灘と周防灘の間に関門海峡があるが、この海峡は潮流が早く、古代に於いて船舶の通行は困難を伴う場所である。
それ故、潮待ちの場所として、洞海湾と行橋が、重要性を持っていたと考えるのである。

延喜式内社では、「豊国主」として祭った神社はない。
「豊斟渟命」として祭られている。
主祭神として祭る神社には、
「野神社」愛知県豊田市野口町水分日面226
「比比多神社」神奈川県伊勢原市三ノ宮1468 がある。


豊前松江角田馬場字湯ノ川内に「豊国主神社」というのがある。
主祭神は「国魂神」「保食神」
無格社ではあるが古社であり、思うにこの辺りが豊国における祭祀の中心地であったのであろう。

又、近くの馬場字毘砂門には「雲見神社」がある。
主祭神は「石長姫神」「大山祇神」であり、「高靇神」を合祀
この場合の『雲』とは求菩提山を指す。
求菩提山は元「雲出山」と呼ばれていた。
「高靇神」は鶴屋の「貴船神社」を合祀したものである。


求菩提山は火山であり、何カ所もの噴気孔から噴気を出していた様子から、
古代において雲はその様にして出現すると考えられていたのだと思われる。
雲は雨を呼び、雨は作物の恵みをもたらす。
それ故、この地方において、求菩提山は古来崇敬対象として特別な存在であったのだと考え得るのである。


「クモ」は「クム」「クマ」「カム」「カミ」等と音韻同列である事を考えると、
この神の重要性は更に増す。
むしろ、「豊神尊」と記す方が相応しいのではないかと考えてみたりする。
この意味では、出雲は、「出神」に等しい。

又、出雲は「いずくも」の短縮化したものであろうと考えれば、出雲の地位の重要性も
合わせて考える必要があるし、景行期に「蜘蛛族」制圧物語が記されていることも
この神と無関係ではないであろう。
別稿に改めるが、耳垂・鼻垂の穴処した洞穴というのは、現に残っており、
そこは神雫の滴る場所なのである。


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Last-modified: 2014-07-17 (木) 05:13:57 (3569d)