神社a

○「鮭神社」
島根県雲南市大東町川井186 地理院地図

主祭神:豊玉姫命

「雲陽誌」大原郡-2帖-k71、川井で「鮭大明神」

阿用川上流部にある。
参道口前に流れる阿用川は実に清涼な川である。
かつてはこの辺りにまで鮭が遡上してきていたのであろうか。
今は全く見ることはないが、山陰の各河川ではかつては鮭が遡上していたと云う話は良く聞く。
鮭にせよ鮎にせよ、稚魚は生まれた川の水質・匂いを記憶し、それを辿って元の川に戻ってくると云う。
不思議な習性である。
一度何かの原因で途絶えると、そのままその川に戻ってくることはなくなり絶えてしまう。
阿用川に鮭が遡上しなくなったのは川に産鉄屑を流した為のようである。

祭神の豊玉姫命は海神の娘。火遠理命(山幸彦)の子である鵜茅葺不合尊を身ごもり、お産のために海から陸に上がってきた。
鮭が産卵のために遡上してくることを象徴しているのであろう。
いや、むしろ神話の方が鮭の遡上を象徴したのかもしれない。この意味では[豊玉]は卵を多く孕んでいる事からの名付けだったのかもしれない。

余談だが、近年萩の橋本川に鮭が遡上して来たと話題になった。
ちなみに、許可無く川で鮭を捕ることは禁止されている。

「鮭神社」というのは全国に3社。他には福岡県嘉麻市と北海道千歳市。いずれも海からはずいぶん離れた場所にある。
北海道の鮭神社は嘉麻市からの勧請社で現在は慰霊塔のみ残るという。
嘉麻市の鮭神社は近くに遠賀川支流の嘉麻川が流れるが炭鉱の影響で鮭が遡上しなくなったという。
標高が高く水のきれいな馬見山近くで稚魚を育て放流を続け、近年遠賀川に鮭が戻り始めているという。

鮭に関しては他に兵庫県香美町の「鮭大明神」がある。また兵庫県朝来市の「倭文神社」は鮭の宮とも呼ばれている。


(鮭神社 社前の阿用川)
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(鮭神社 参道口)
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(鮭神社 参道)
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(鮭神社 拝殿)
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・虫除けだろうか、網が吊されている。

(鮭神社 拝殿内)
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・拝殿に祭壇がない。簡素で古式。

(鮭神社 扁額)
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(鮭神社 社殿)
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・約25200万年前、ベルム期末に海洋生物の90%が死滅する大量絶滅が起きたと考えられるようになってきている。
今の海の生物の多くはその後川から下った生物の末裔だと考えられている。
そのような海洋生物の絶滅は何度か起きており、海で発生した多くの生物が陸に上がり、その後再び海に戻るということを繰り返してきている。
鮭や鮎や鰻、蟹など川と海を行き来する生物達は、そういう太古からの地球の営みを体現してきているのであろう。

・近年東北の縄文遺跡から鮭の骨が発掘されている。そのような古代から鮭は食の恵みであった。

  • この神社、備後の産鉄民がこの地域に侵入してくる以前からあったものと思われるが、出雲国風土記や延喜式には記載がない。

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Last-modified: 2022-05-17 (火) 14:36:32 (700d)