神社a
○「玉日女神社」
島根県仁多郡奥出雲町三成宇根 地理院地図
主祭神:玉日女命
景勝地「鬼舌震(オニノシタブルイ)」の縁起となった神社。
『出雲国風土記』仁多郡の「戀山(恋山)」(シタイヤマ)の縁起である。
「鬼舌震」は「ワニの恋うる」が訛ったものと云われる。
斐伊川支流大間木川にあるV字谷渓谷である。
「玉日女神社」は谷の東側山中の中腹に小さな社があるが、大岩が無数にあるのはこの社の上流方向である。
西岸の山から崩落したのであろう巨岩が景勝を形成している。
- 「玉日女命」の系譜は不明。
阿伊村からこの地に逃れてきたという。
地元では阿伊村は今の馬木のことだとしている。
してみると、玉日女命は大馬木川を下って逃げたことになる。
ところで、鬼舌震から東に一山越えた大谷地区に「姫子神社」 地理院地図というのがあり、ここではワニに襲われた姫子という女神が馬に乗った神に助けられ天に上ったという伝説が残っている。
「玉日女命」と「姫子神」が同一か否かは定かではないが、おそらくは同神であり、何れにせよワニは東方からやって来ていたものと考えられる。
則ちワニというのは吉備の勢力で、それを地元の女神が拒んだという伝説の様に思われる。
奥出雲に広く残る八俣の大蛇伝説というのは、これを原初としているのかも知れない。
『出雲国風土記』に八俣の大蛇伝説が記載されていないというのは不思議なことであるのだが、出雲が吉備の勢力則ち畿内勢力の支配下に入った後の成立であるということを考えると、八俣の大蛇とは吉備勢力のことでそれ故風土記への掲載を憚り、僅かに戀山の縁起として残されたものかとも思われる。
(玉日女神社 鬼舌震 案内板)
・案内板には「日本海から玉日女命を慕って登ってきたワニ(当地方で小型のサメのこと) 云々」と記されているが、「ワニだから海から来た、それ故日本海だ」という安易な思い込みで記されている。日本海から斐伊川・大間木川を遡上してきたのなら、上流に大岩があっては玉日女命は逃れられない。大岩は神社から上流に2kmに渡り続いている。次の案内板2を参考。
ちなみに、瀬戸内にもサメやフカはいる。余談だが戦前は、水泳の際長い赤褌をつけて泳いでいたという。
それはサメやフカは自身の体長より長いものは襲わないと信じられていたからだそうだ。
(玉日女神社 鬼舌震 案内板2)
(玉日女神社 鬼舌震 恋吊橋)
(玉日女神社 恋山)
・遊歩道が作られており、その上方、白い岩部分に「玉日女神社」がある。
(玉日女神社)
(玉日女神社 参道)
・遊歩道を少し進んだところから入ることが出来る。
(玉日女神社 扁額)
(玉日女神社 鬼舌震1)
・玉日女命が塞いだという巨岩がゴロゴロしている。
(玉日女神社 鬼舌震2)
・対岸の山から崩落したのであろう。