[[神名解題a]] ''「御倉板挙之神」''(みくらたなのかみ) 古事記、伊邪那岐命が天照大御神を生んだ後、天照大御神に与えた珠。 御頸珠とあるから首飾り。 この時、「高天原をしらせ」と事依さしているから、国を治める象徴であろう。 その後、高天原に速須佐之男が向かった際、天照大御神がこれを迎える時に五百の御統の玉を纏っているが、それが御倉板挙之神であるのかどうかは不明。 速須佐之男と天照大御神の誓約の時、天照大御神の左の御角髪の珠、右の御角髪の珠、御かずらの珠、左手の珠、右手の珠、と次々にこれを噛んで5柱の男神を生んでいるが、これらの珠の中に、御倉板挙之神があったのかどうかも不明。 天照大御神の岩戸隠れに際して、玉祖命が作った「八尺の勾玉の五百の御統の珠」が後の八尺瓊の勾玉とされているが、これは明らかに元の御倉板挙之神ではない。 天津日子番能瓊瓊藝命の降臨の際、八尺瓊の勾玉が授けられているが、これが御倉挙之神かどうかは不明。 ---- で、何が云いたいのかというと、 珠が国を治める権威の象徴であること。それも首飾りの珠。剣でも鏡でもない。 それは一つではなく複数の珠で構成されているのであろうと云うこと。 剣も鏡も天皇の身近には置かれていないが珠だけは身近に置かれてきたというのは、 国を治める象徴が珠であることを示していると思われる。 瓊瓊藝降臨の際も、最初に記されるのは剣でも鏡でもなく珠である。 御倉板挙之神というのは、板挙と云うことから、棚に置かれているものであること。 三種の神器の一つ、八尺瓊の勾玉が、御倉板挙之神と同一であるかどうかは不明だが、 同一である可能性も否定できないと云うこと。 同一でないのであれば、この神は高天原にまだ置かれており、それが見つかればそこが高天原であること。 一つの可能性として、 速須佐之男が誓約で用いた珠が、御倉板挙之神をバラバラにして天照大御神が身に纏ったものであり、それらを速須佐之男が噛み砕き5柱の男神を生んだ為、改めて玉祖命が作らなければならなくなった。それが今に伝わる八尺瓊の勾玉であるのかも知れない。 「板挙」を(たな)と読むのは、奇異な感じがするかも知れないが、 元々呼び名があって、それに漢字をあてたのであるから、どうと云うこともない。 柳田のように奇妙なこじつけをする必要など無い。 ---- ヒミコが魏から貰った鏡が王権の象徴として扱われる論があるが、上記よりこれは間違っていると云わざるを得ない。 又改めて記すつもりだが、鏡は結界であって王権の象徴とは直接の関係はない。 ついでに、中国では玉(ぎょく)翡翠、とりわけ白玉が王権の象徴とされて来たが、 日本の珠は瓊(に)つまり赤い瑪瑙である。