神名解題a

八束水臣津野命(ヤツカミズオミズヌノミコト)

この神を主祭神に祀る神社

「八束」「八束水」という名の地名


出雲国風土記で国引き神話の主人公。
古事記にある速須佐之男命の4世の孫「淤美豆奴神」と同一神と見られている。天之冬衣神の父、大国主神の祖父。
島根県邑智郡邑南町の龍岩神社伝説に八束水臣津野命が出ており、石見という地名縁起になっている。


長浜神社では、「八束水臣津野命」と「淤美豆奴命」を別神格として祭り、「淤美豆奴命」の妻神が「布帝耳命」としている。
「八束水臣津野命」の子が「淤美豆奴命」とも云われる。
(古事記学者からの度重なる疑問に辟易したのか、現在では国引きの神・妙見の神と分けて祀るとしている)

北居都神社では、兄弟神の「筑杵等手留比古命」と共に国造りをしたとされる。
「筑杵等手留比古命」は「衝鉾等番留比古命」ともされるが「衝鉾等番留比古命」は秋鹿郡多太郷の多太神社に祭られ「須佐能乎命」の子とされるので不可思議。


この神格、出雲では重要な神格なのだが、良く解らない事が多い。
生誕地が蒜山北方とも伝えられ、杖を突きながら各地を巡り、国を縫いなしたとも伝えられる。
「束」は計量の単位だが、「つか」であって、「そく」でも「たば」でもないから容量の単位ではない。
長さであれば手の握り幅、即ち握り拳の幅にあたる。(10cm前後)
八束では80cm前後。この位の長さであれば、命が常に手にしていた杖か刀の長さかとも思う。
八束水というのは意味が解らない。
八束水が気高町の地名にあるヤツカミであるならば八掴みで、出雲9郡のうち、他の8郡を掴んだと云う意味かとも考えられる。
「オミズ」が「大水」という説(伊勢での創作?)は頑じ難い。臣津=(おみ・つ)であって(お・みつ)ではない。
大水の神というのであれば、国土を流すことはあっても、引き寄せることはない。
「臣」は目の瞳を表し、「神に仕えるもの」というのが字義である。
「津」は水辺を表す。

上記を勘案すると「八束の杖をもち、水辺で神に仕えるもの」というのが神名の意味のようにも思われる。


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