神社a

○「琴弾山神社」(琴引山神社)
島根県飯石郡飯南町佐見 地理院地図

主祭神:大国主大神

琴引山山頂近くにある。
女夫岩と呼ばれる2つの巨岩の間に階段が設けられ、その先に社がある。
案内板には「「出雲国風土記」所載の古社なり」とあるが、
「出雲国風土記」に記載はない。
「出雲国風土記」飯石郡に記載されているのは「琴引山」であって、「琴弾山神社」という記載はどこにもない。

「琴引」の「引」は[弓+|]で、[|]は弓の弦を表す。
「引」は弦を用いた楽器を鳴らす場合一般に用いる。
「弾」は特に弦を叩いて音を出す場合に用いる。(例えばピアノ)
又「引」には納めるという意味もあり「琴引山」というのは両方の意味で「引」を用いたのであり「弾」とするのはふさわしくない。
社名で「琴引山」を「琴弾山」に変えているが、このような漢字の字義を知らない者が変えたのであろうと思われる。

社の西方に広い平地があり、中世近世修験の時代に宿坊があった場所と云われているから、「琴弾山神社」というのは修験者たちが祠を建てて祀ったのが原初であろうと思われる。
更に南方には杉木立のあるかなり広い場所がありこの附近にも宿坊があったのであろうと思われる。

フォレストパークからの登山道口の案内には祭神として「大国主大神・伊弉冊大神」と記されている。
琴引山に「伊弉冊尊」に関する伝説は残されていない。「伊弉冊尊」を祭神としたのは、修験者が山の神として良く行うことであり、これも「琴弾山神社」が修験者の手になる社であることを示している。
そもそも「大国主」という祭神名は風土記には用いられていない。

余談だが、修験の祖とされるのは「役小角」であるが、その父「役大角」は出雲出身である。


近年、琴引山に登る人の過半はスキー場のあるフォレストパークからの登山道であろうが、
参道としては、東方琴引地区から尾根沿いに登るのが本来である。
由來八幡宮が合社した頓原の多倍神社の奥宮が琴弾山神社といわれていたりするが、そうであるなら、由來八幡宮から敷波川沿いを遡上し琴引に至りそこから尾根筋を登ると云うのが参拝の行路であろう。

登山口には鳥居がある。地理院地図
ここから登ると、途中に「琴の岩屋」と呼ばれる窟がある。
傍に小社がもうけられている。
窟は入り口は狭いが、入ると結構な広さがあり右方向に下る階段がある。
その先には二段の平石があり、その右手側は深く一段下がっている。
大きさから奥の平石が大神の御琴と呼ばれたのであろう。
窟全体は大岩二枚が寄り重なって三角構造となっている。
最深部は細く深くなっている。
江戸期に作られた水琴窟というのがあるが、窟の天井から水滴が落ちて平岩に当たれば同様な響きを奏でるのではないかと思われる。


  • 加藤義成が「修訂出雲国風土記参究」p397の解説で「窟」について、「琴の岩屋」では記述にあわず、「大神岩」が「窟」であろうと主張しているが、「出雲国風土記」に記された大きさは、琴の岩屋内部の平石のことであり記述にあっている。
    上に古来の参道について記したが、「大神岩」はこの参道から外れており、仮に「大神岩」が「窟」であるなら、参道はこの岩に向かってしかるべきである。加藤は時に奇説を主張し地元で混乱を招いているが、「大神岩=窟」説も奇説に過ぎない。

(琴弾山神社 参道口)
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・フォレストパーク東方にある。

(琴弾山神社 案内板)
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(琴弾山神社 社殿付近)
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(琴弾山神社 社殿)
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(琴弾山神社 三瓶山遠景)
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(琴の岩屋)
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・社(穴神社/祭神:大国主命)の右手に窟がある

(琴の岩屋 )
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・窟入り口付近

(琴の岩屋)
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・階段を右手に降る。壁には蝙蝠が数匹

(琴の岩屋)
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・暗くて解りにくいが三角石の奥に平石がある。右手は切り落としになっている。

(琴の岩屋)
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・最深部


(琴引山 山頂)
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・地理院地図表示で1013.4m、通常1013mであるが、これを1014mと記している事が多々ある。
山頂にケルン(石積)を作りそれで1014mというのであろうか。涙ぐましく笑える。
が、こういうのは認められないし度を超すと危険なのでやめた方が良い。
ここに積まれた石は周辺から掘り出し寄せ集めたものであろうが、それが植生を乱し土砂流出の原因になることを理解していない。
近年こういうケルンの撤去が各地で始まっているようだがなかなか大変な作業である。

(琴引山 宿坊跡)
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・最近発掘調査されたらしい。


(琴引山案内1 北麓フォレストパーク)
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(琴引山案内2 北麓フォレストパーク)
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(琴引山南麓 島根県民の森・赤来地区 学びの森案内)
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・南麓は熊の生息地で、山中で実際に遭遇した。

(琴引山南麓 島根県民の森・赤来地区 小田川河畔)
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Last-modified: 2023-01-03 (火) 05:44:43 (469d)