『延喜式』
『延喜式』(国宝:九条家蔵本)巻9-01
(『延喜式』巻9-01)【宮中神社】†
宮中神社 三十六座
京中座神 三座
幾内神 六百五十八座
山城國 大和 河内 和泉 摂津 五ヶ國
東海道 十五ヶ國
三百四座 並預祈年月次新嘗等祭之案上ノ
官幣就中七十一座預アツカル相嘗ノ祭
一百八十八座 並預祈
年國幣
小二千六百卌座
四百卅三座 並預祈年
案下官幣
二千二百七座 並預祈
年國幣
宮中神 卅六座
神祇官ノ
西ノ
院坐御𭘆等祭神廿三座 並大月
次新嘗
八神 御𭘆ノ
祭神八座並大月次新嘗中宮東宮
御至亦同
神産日神 高御産日神
玉積日神 生産日神
足産日神 大宮賣神
御食津神 事代主神
北舎 座摩𭘆祭マツル神五座並預大月
次新嘗
生井神 福井ノ
神
緦長井神 波比祇神
阿須波神
- 座摩𭘆祭神…(いかそりのかんなぎのまつるかみ)
[爪]は音でソウ。
[座]は座ること。[坐]と記していることもある。[摩]は磨くこと。[𭘆]は巫女で7歳~16歳の少女。
([𭘆]はブラウザーによっては表示されないことがある。[巫]の異体字。「―/坐])
[座摩𭘆]というのは「座って磨く巫女」を意味する。
[座摩𭘆祭神]というのは、そのような巫女が奉祭していた神という事で、それが北舎に5座あった。
- ここで「座摩御𭘆祭神」とはなっていない。即ち(いかそりのみかんなぎのまつるかみ)ではない。
これは、その地位が少々低かったことを意味しているのであろう。
- 生井神 福井神 緦長井神…井戸の神
・生井神(いくいのかみ)は水が湧き出すところの神。
・福井神(ふくいのかみ)これを(さくいのかみ)と多く読まれているが誤読であろう。[福]にサクの読みはない。
書影で[七ク]ヒクでありフィクの読みであったと思われる。延喜式神名帳註-上-k005で[寸ク]のように記されており、これを[サク]と読んだのが誤りの始まりと思われる。
[福]の字義は象形でふくよかに膨らんだ樽を神に捧げる棚に置いている姿を表す。
福井神は湧き出した水が豊かに貯まること、水量の豊かなことを示す神。
・緦長井神(つながいのかみ)は綱長井神とも記される。井戸から水を汲み出すのに用いる綱が長いこと、すなわち深い井戸であることを示す神。(国史大系では「綱長井神」)
- これは3箇所の井戸の神ではなく、一つの井戸に3神が祀られていることを表現している。
- 吉川弘文館「国史大系 延喜式」の記述とはかなり異なる。
(『延喜式』巻9-02)【京中坐神】†
於大内祭之
北舎 御門ノ
𭘆祭神八座並大月
次新嘗
櫛石窓神四面門
各一座 豊石窓神四面門
一各一座
北舎 生嶋𭘆祭神二座並大月
次新嘗
生嶋神 足嶋神
宮内省ノ
坐神三座並名神大
月次新嘗
薗神社 韓神社二座
大膳軄唑神三座並小
御食津神社 火雷神社
髙倍神社
造酒司坐神六座大四座
小二座
大宮ノ
賣神社四座並大月
次新嘗
酒殿神社二座並小
酒旀豆男神 酒旀豆女神
主水司坐神一座小
鳴雷神社
京中坐神三座並大
左京二條坐神社二座並月次相
嘗新嘗
本社 大和國添上郡
對馬國下縣郡
太祝詞神社大詔戸命神 久慈真智命神本社 坐大和國十市
郡天香山坐
櫛真命神
同京ノ
四條坐神一座月次
新嘗
隼神社
- 異体字として安易に処理されていることが多いが、座・坐・巫・𭘆・唑は書き分けられている。
書き分けるのは意味があるからであって、意味がなければ書き分けるはずはない。
『延喜式』(国宝)巻9-03