神社a
◎「和歌山権現」(多伎社)
島根県出雲市多伎町小田 地理院地図
主祭神:阿陀加夜努志多伎々姫命
「和歌山」は(わかさん)と読む。
社のある山名である。
雲陽誌神戸郡1k70で「三瀧權現」
多伎町の小田川中流、県道280号線を南下し最初のトンネル(和歌山トンネル)のある手前を左に下ると案内がある。
小田川を渡り対岸の中腹まで登ると岩窟があり、そこに和歌山権現の社がある。
更に左手を登れば「上の社」と呼ばれる祠がある。
参道は荒れ果てており、かなり危険。「上の社」へは、登山覚悟が必要。
昭和39年水害で被災し荒廃したらしい。
本社由緒板では「阿陀加夜努志多伎々姫命ノ御旅伏シ給フ処」とある。
岩窟には鑿跡があるから鉱物を求めて掘り拡げられたものであろう。
岩膚から雫が多数垂れ、白色の結晶(方解石?)が多数見られる。
岩窟の右手に小滝の跡があるが、今は殆ど枯れている。
この岩場の雫水を飲むと乳の出が良くなると信仰されてきたらしい。
多伎町の名産として白汁を出す無花果(イチジク)があるのは、この信仰と関係あるのであろう。
(和歌山権現・多伎社)和歌山トンネル

(和歌山権現・多伎社)和歌山トンネルレリーフ案内

この案内には「阿陀加夜努志多伎吉比賣命」と記しているが、間違っている。
(和歌山権現・多伎社)和歌山権現由緒案内板

この由緒板には「阿陀加夜奴志多々姫ノ命」とあるが、間違っている。
下に本社由緒を記載しておく。
(和歌山権現・多伎社)参道口と遙拝所

右の鳥居をくぐって川を渡る。左手は遙拝所。今は休憩所のようになっている。
(和歌山権現・多伎社)参道

これは序の口。この先石段は途切れている。
(和歌山権現・多伎社)岩窟内の拝殿

・岩窟の中に本殿と拝殿がある。
・一応記しておくと、おおよそ開口部間口約6m、高さ約4m。内部は広がっており最高部約5m。最深部まで約10m。
(和歌山権現・多伎社)本社

(和歌山権現・多伎社)本社由緒板

由緒
阿陀加夜努志多
伎々姫命ノ御旅伏
シ給フ処ト傳フ
多伎吉ノ巖窟アリ
テ和歌山権現ト云フ
出雲風土記ニ云フ所
ノ多支ノ社ナリ
霊水湧出シテ産婦
ノ祈祷に霊験アリ
(和歌山権現・多伎社)奥の岩窟

・元は祠か何かがあったのかも知れない。今は手前に雫を受ける瓶が置いてある。
(和歌山権現・多伎社)霊水案内板

(和歌山権現・多伎社)壁面の結晶物

天井や壁面一帯に白い結晶物が析出している。
(和歌山権現・多伎社)滝跡

本殿岩窟右手に解りにくいが滝跡があり、下方に壊れた瓶などが置かれていた。
(和歌山権現・多伎社)和歌山権現社復興趣意案内

(和歌山権現・多伎社)上の社参道口

拝殿岩窟左手に小さな岩窟があり、元は小祠があったように思われる。左手先を登っていく。
(和歌山権現・多伎社)上の社登山道

参道は既に崩れており、ロープが掛けられているのを頼りにほぼ直登。最後はロープもないので滑落要注意。
(和歌山権現・多伎社)上の社祠

・直登後左手に薮漕ぎしながら進むと上の社の祠がある。この写真は草木に覆われ祠が隠れていたのを片づけて後に写した写真。
暫くは大丈夫だろう。祠奥は崖となっていてフェンスが立てられている。
・雲陽誌を参考にすると祭神は伊弉冊尊と思われる。
(和歌山権現・多伎社)上の社にあった小田富士ヶ城跡案内板

谷向かいに小山があり、その案内。これも倒壊して見えなくなっていたのを周辺を片付けて撮影した。
(和歌山権現・多伎社)遙拝所から見た上の社の位置

遙拝所から左手上方岩場(写真中央)に、上の社のフェンスが見える。
現状登るのは危険なので、この岩場を目途に参拝されたし。
- 岩窟を「多伎吉ノ嚴窟」と呼んでいることから『出雲国風土記』神戸郡記載の「多吉社」であろう。
多吉が多伎に改字され、雲陽誌で多支社と記したことから多伎社と言われてきているように思われる。