埴安彦神=埴安姫神
書紀本文には記載のない神である。

埴(はに)は陶土のことである。
埴安というのは、それ故、陶土を安んじる、つまり陶土を育てることを云うのだろう。
陶土は山から産出して来ただけでは使えない。
粒子の大きさを整え、水を混ぜて粘土にし、寝かし、練り上げ、初めて陶土として使えるのである。
陶土を育てるというのはこの過程全般を云う。
埴安神は、それ故、これらの過程が上手く行くことを願って祭る神であるのだろう。

面白いことに、神社祭神で、埴安彦神だけを祭ったところはほとんどない。
埴安神として両神祭られるか、あるいは埴安姫神だけが祭られるか、どちらかの場合がほとんどである。
この事は、この陶土を育てると云うことの意味と、もう一点は、古代において作陶が女性の作業であったことを、示しているのだろう。

粘土自体の神は埴山姫、若しくは埴山神として区別される。