筑紫嶋
現在の九州島である。
(古事記)
古事記では、筑紫嶋を4つの国に分けている。
「次に筑紫の嶋を生みき。この島もまた、身一つにして面四つ有り。面毎に名有り。
故、筑紫國は白日別と謂い、豊國は豊日別と謂い、
肥國は建日向日豊久士比泥別と謂い、熊曾國は建日別と謂う。」

筑紫は語義不明と云われているので、記しておく。
「筑」は「築」の略字体である。
「紫」は天子を象徴する色である。(紫宸殿・紫宮)
即ち、紫宮(天子の王宮)を築くという意味を表している。
つまり、ある時期に、九州北部に王権が存在したことにちなんでいるのである。

この事は、「九州」という呼び方にも現れている。
書経禹貢篇に記されているが、一つの独立した世界を示す語である。
その世界は一人の天子が治めるべき世界と考えられている。
「九州」と呼ぶとき、それは独立した世界であることを示す。
何に対して独立しているかと云えば、それは裨海によって隔てられた赤県神州、即ち中国を対象にしている。
つまり、中国から独立した王権を象徴した表現が「九州」なのである。

肥国の別称「建日向日豊久士比泥別」についても、古来から不詳とされてきた。
私の見解を記しておく。
「建日つまり熊曾國に対して、古くから士を多く置いて対抗してきた地域」という意味を示す。
参考までに、(上記)に記された九州の別の分国表現を掲載しておく。
白日別国 筑前・筑後
速日別国 肥前・肥後
奇日根別国 日向・大隅
建日別国 薩摩