天御中尊
(書紀)には記載のない神である。
古事記では「天御中主神」と記してあるが、私は「尊」を用いる。
この神は名前から判断すると、北極星の神格化であろうと思われる。
いわゆる北辰信仰である。
古代に方位を定める時、北極星は重要なものであったはずである。
それ故、古事記では最初の神として記されたのだと考えられる。

記紀では星神についての記述は非常に少ない。
これは他の民族の神話と比べて異常である。
私が古史古伝に興味を持つのは、これらの中には星神についての豊かな記述が見られるためである。
記紀は政治性に傾きすぎており、古来の神話伝承についてはかなり寡少化されている。
この事については、いづれ明らかに出来るであろう。
山口県の下松市に降松神社というのがあり、この神社の祭神が「天御中尊」である。
ここは流星伝承があり、山頂にある元宮の社地には流れ星が落ちたと伝えられている。
現在は禁足地となっている。

この神社は後に大内氏にからむ伝承を持つようになったが、
これはこの神社の奉祭者「吉原」氏にからむ後世の付会であろう。
各地にある「大祖神社」で祭られることが多い。