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[[『出雲国風土記』]]

''『出雲国風土記』記載の草木鳥獣魚介''

各郡毎に記すと重複し煩雑となるのでここに纏める。
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**草木 [#k3582b61]

--藍(アイ)・漆(ウルシ)…染料の藍と漆器に用いる漆。
校注出雲国風土記では「藍漆」を分けずに(ヤマアイ)と読んで、タデ科のアイの事としているが、「藍漆」では(ヤマアサ)即ち反魂草(ハンゴンソウ)の事を指し、違和感がある。
--多年木(アワキ)…モチの木・橿木(カシノキ)・青木の総称。
--芋菜(イエツイモ)…里芋の古名
--巻栢…イワクミ。岩檜葉(イワヒバ)の古名。巻柏と記したり、岩松と呼ばれたりする。乾燥すると葉が縮れて巻き、水分を得ると再び開く事から復活草・不老不死草等とも呼ばれた。去痰・打撲症に用いる。又炒って止血剤等に使う。

--黃々(オウゴン)…正しくは黄苓、黄金花(コガネバナ)コガネヤナギとも云う。消炎・解熱・腹痛薬。校注出雲国風土記では(ヒヒラギ)と読んでいるが不明。ヒヒラギは「柊」。
--黃精(オオエミ)…鳴子百合(ナルコユリ)の古名。滋養・強壮薬
--宇竹(オオタケ)…ハチクの古名。半竹・淡竹。
--薺頭蒿(オハギ)…嫁菜(ヨメナ)の古名。(茸カとあるのは不要)

--栢(カエ)…榧(カヤ)の古名。
--荷蕖(カキョ)…蓮(ハス)の事
--蘿(カゲ)…日陰蔓(ヒカゲノカズラ)の古名でもあるが、ここでは蔦を指すと思われる。
--葛根(カッコン)…葛の根(クズノネ)。葛根湯の主成分として有名。滋養・発汗・風邪
--茅(カヤ・チ)
--貫衆(カンジュウ)…銭巻(ゼンマイ)の生薬名。虫下し。
--苦参(クジン)…眩草(クララグサ)の根の生薬名。クラクラするほど苦い事からクララと呼ばれる。健胃・消炎・皮膚病など。
--玄参(ゲンジン)…胡麻葉草(ゴマノハグサ)の根を乾燥したもの。解熱・解毒。
--檎(ゴ)…「檎」は林檎(リンゴ)の事。林梧とも書く。又、梧桐は青桐を云う。後に赤桐、白桐が続くので、青桐を指しているのかも知れない。
「校注出雲国風土記では「杉」とし「字或作椙」としている。
--高良姜(コウラキョウ)…花茗荷(ハナミョウガ)の事。健胃・整腸・解熱薬。
--五味子(ゴミシ)…朝鮮五味子(チョウセンゴミシ)。果実を鎮咳、強壮薬とする。
校注出雲国風土記では(サネカズラ)としているが五味子の代用品で別種。

--柴胡(サイコ)…ミシマサイコの根を柴胡と呼び生薬として用いる。解熱・鎮痛。
--細辛(サイシン)…薄葉細辛(ウスバサイシン)・韮根草(ミラノネグサ)。鎮咳・鎮痛薬。
--師太(シダ)…ウラジロの別名
--霜黒葛(シモツヅラ)…黒葛はカズラの蔓。霜に遭うと丈夫になり、綱の代わりになる。
--芍薬(シャクヤク)…根を鎮痛・抗菌・止血に用いる。
--蒋(ショウ)…マコモ
--女荽(ジョイ)…女委、(エミグサ)。甘野老(アマドコロ)の古名。ボタンヅルの事。根茎を乾燥させた物を玉竹(ギョクチク)・萎蕤(イズイ)と云い、強精・強壮剤として用いた。老化防止、中風に効くとも云われる。又長期に利用すれば膚を美しくするとも云われることから「女委」と名付けられたのであろうと思われる。
--荽(スイ)…「胡荽」の事で、コリアンダー・パクチー。

--芍藥(シャクヤク)…古名を「夷薬」(エビスグスリ)という。今は観賞用に品種改良された華やかな八重咲きのものが多いが、在来の物は一重咲きの日本芍薬と呼ばれるもので、風土記時代はこれを指す。余談だが、いわゆる「立てば芍薬座れば牡丹」と云う時の芍薬は八重咲きの方を指す。
根を乾燥し解熱・鎮痛・止血・消炎などに用いる。又筋肉の状態を整える作用があるとも云われる。「薬」の文字が示すように様々な生薬に配合されて用いられる。
・出雲国風土記考証p170、校注出雲国風土記p42では共に「芍薬」に(エビスグスリ)という読みを充てているが、上述のように(エビスグスリ)は「夷薬」であって、「芍」は(シャク)であり、この読みに(エビス)を充てるのは正しくない。「芍薬」と記してあれば(シャクヤク)と読むべきであり、古名を充てて読むのは混乱を招くだけである。同様の例は多々散見される。
--升麻…晒菜升麻(サラシナショウマ)のこと。山升麻ともいう。葉を水に晒して食用とし、根乾燥させ、解熱・解毒に用いる。夏に白い花をつける。

--蜀椒(ショクショウ)…本来は花椒(カショウ)であるが、日本では山椒(サンショウ)を指す。体温を安定させる作用があり、腹痛・下痢などに用いる。特に花椒・朝倉山椒をさしているのであろう。

--女青(ジョセイ)…屁糞葛(ヘクソカズラ)のことであろう。臭いが強烈なことでこの名が付けられた。早乙女花(サオトメバナ)・灸花(ヤイトバナ)とも云う。根を乾燥させ下痢止め・利尿剤とする。実を搾ってアカギレなどにも用いる。
・標注古風土記p187では「女靑」と記し(やんた)と読んでいる。
・出雲国風土記考証p168では、「薔薇科の蛇含(きじむしろ)の根も女靑といはれ、茜草科のヘクソカズラも女靑といはれ、いずれも薬とすることが出来るから、その何づれを指したものか知り難いけれども、多分蛇含の根をいふのであらう」と注記している。
・校注出雲国風土記p42では(かばねぐさ)と読み(ヘクソカズラ)の事としている。
--薯蕷(ショヨ)…山之芋(ヤマノイモ)の別名。強壮・疲労回復。
--商陸木(ショウリクボク)…古名で(イオスキ)とも読む。キク科ヤマボクチ属の菊葉山火口(キクバヤマボクチ。通称山牛蒡ヤマゴボウ)。根が利尿剤となる。火口は葉の裏に毛があり火種として使われたことによる名称。
ヤマゴボウ科の山牛蒡ではない。
校注出雲国風土記では、「商陸・高木」と分けて、高木に(サワソラシ・カサモチ)を充てている。カサモチは「和藁本」(ワコウボン)と記され「藁本」とも記すようだが、「高木」は不明。

--秦淑…(シンショウ)。山椒の漢方での呼び名。鎮痛・健胃剤などとして用いる。歯痛・口内炎等。
--石葺…石葦(セキイ・イシカシワ)の誤りであろう。乾燥葉を煎じて用いる。利尿・咳止。
--石斛(セキコク)…少彦薬根(スクナヒコナノクスネ)・岩薬(イワグスリ)という古名がある。健胃薬・強壮薬。
--前胡(ゼンコ)…野芹(ノゼリ)。解熱・去痰・鎮咳。
--續斷…続断(ゾクダン)。鍋菜(ナベナ)の事。根を煎じて骨折・肉離れの治療や強壮薬として用いる。

--槻(ツキ)…欅(ケヤキ)の古名。
--海榴(ツバキ)…海柘榴(ウミザクロ)、椿の異名。椿の実が柘榴の実に似ている事によると言う。海を付けたのは海辺の山中に多くある椿を指したのであろうと思われる。
--都波(ツワ)…ツワブキ
--當皈…トウキ(当帰・當歸)。「皈」は「帰」の異体字。花が咲く前の根を湯通しし乾燥させて用いる。血行促進・鎮痛・鎮静・強壮
--杜仲(トチュウ)…樹皮を生薬として利尿・肝腎強壮。葉を杜仲茶として用いる。
--獨活(ドッカツ)…ウドの生薬名。湿布薬になる。

--薺(ナズナ)…単漢字ではナズナの事だが、次のようにオハギと読む。

--貝母(バイモ)…笠百合(アミガサユリ)の事。鱗茎を乾燥し咳止めなどに用いる。

--蘗(ハク)…黄檗(オウバク)、黄膚(キハダ)の事。ミカン科の常緑高木で、樹皮を剥くと黄色い。この黄色い部分が生薬となる。抗菌・健胃整腸薬。又染料にも用いる。禅宗の黄檗山はこれに由来する。
--麦門冬(バクモントウ)…蛇ノ髭(ジャノヒゲ)・藪蘭(ヤブラン)。古名は山菅(ヤマスゲ)。根を煎じて生薬とする。麦門冬湯として知られ咳に効く。
--萆解(ヒカイ)…山芋の一種。和名は鬼野老(オニドコロ)。根茎を乾燥させた物を煎じて、風邪・鎮痛に用いる。


--薇(ビ)…ゼンマイのこと。ちなみにワラビは「蕨」である。ワラビは毒性がありあく抜きしないと食用に向かない。
--萆解(ヒカイ)…萆薢・山芋の一種。和名は鬼野老(オニドコロ)。根茎を乾燥させた物を煎じて、風邪・鎮痛に用いる。
--比佐木(ヒサギ)…久木・楸。赤芽柏(アカメガシワ)の古名。校注出雲国風土記では(キササゲ)としているがキササゲは「木大角豆」。
--白芷…(ビャクシ・ヨロイグサ)であろう。根を鎮痛・鎮静剤として用いる。
--白朮(ビャクジュツ)…朮(オケラ)の生薬名。健胃・健脾・強壮。
--百部根(ビャクブコン)…古名はホドズラ。その根を漢方薬とした。殺菌。

--白歛(ビャクレン)…ガガイモのこと。ガガイモ科。カガミとも云う。種子の形が根茎(芋)に似ており、その皮を開くとつるつると鏡面になっているので「鏡芋」(カガミイモ)とも呼ばれる。「ガガイモ」は、これの訛った呼び方であろうと思われる。
種子を「蘿摩子」(ラマシ)と云い強壮薬とする。「蘿」は連なって生える、「摩」は磨く意味であるから、「蘿摩子」と云うのは外側に髭が生え内側が磨かれている種子と云う意味を指すのであろう。
---ブドウ科の鏡草ではない。ブドウ科の鏡草・ヤマカガミは江戸期に入ってきたもので風土記時代には無い。
校注出雲国風土記・出雲国風土記考証では共に「ブドウ科ヤマカガミ」としているが誤りである。

--路…蕗(フキ)

--伏苓(ブクリョウ)…サルノコシカケ科「松塊」(マツホド)の菌核を乾燥し外皮を取り除いた物。利尿剤・鎮静剤として用いる。

--牡丹(ボタン)…古名は深見草(フカミグサ)。根の皮を牡丹皮(ボタンピ)と呼び生薬とする。消炎・鎮痛・止血・通経・通便。

--李(リ)…スモモのこと。酢桃が元字だが、今では「李」を(スモモ)と読む事が多い。
--龍謄…竜胆(リンドウ)。根を煎じて、利尿薬として用いる。
--連翹(レンギョウ)…古名は(鼬草イタチグサ)。花の付く枝がイタチのように立ち姿になることからの呼び名という。解熱・消炎・腫物に効果。
但し本来の連翹は(巴草トモエソウ:大連翹)もしくは(弟切草オトギリソウ:小連翹)。
--夜千(ヤセン)…烏千(ウセン)の別表記で、夜干・射干とも書く。カラスオウギ(烏扇)・ヒオウギ(檜扇)の事。花が扇の様に見える事からの名付けである。種子は「烏羽玉(ウバタマ)・射干玉(ヌバタマ)」と呼ばれる黒色の粒状である。
根を干して煎じて用い、抗菌・消炎・血圧降下の作用がある。

--楊(ヨウ)…柳のこと。
--楊梅(ヨウバイ)…山桃(ヤマモモ)の事
--狼毒(ロウドク)…ジンチョウゲ科の多年草。殺菌・鎮痛に用いる。

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**鳥獣 [#ue2116db]
--晨風…[[意宇郡2:http://fuushi.k-pj.info/pwk8/index.php?%E3%80%8E%E5%87%BA%E9%9B%B2%E5%9B%BD%E9%A2%A8%E5%9C%9F%E8%A8%98%E3%80%8F%E6%84%8F%E5%AE%87%E9%83%A12#u7ca12d3]]で「字或作隼」とあり(ハヤブサ)と傍記してあるのでハヤブサとするが、一般には「晨風」は(シンプウ)であり、「晨」は夜明けを指し、晨風は夜明け頃に吹く風、「朝風」のこと。隼を晨風(朝風)に充てたのは、山から谷に吹き下ろす風でもあり、夕風より速いからであろう。
--鶬…真鶴(マナヅル)。校注出雲国風土記では(ヒバリ)と読んでいる。
「離黄」は説文に倉庚(ソウコウ)の別名とある。この倉庚は鶯(ウグイス)を指す。
--鵄(トビ)・鴞(フクロウ)…校注出雲国風土記では、「鴟鴞」と記し(ズク)と読み、ミミズクの事であるとしている。
が、「鴟鴞(シキョウ)」はフクロウであり、ミミズクは「鴟鵂(シキュウ)」である。
--作横致功鳥…不明な注記で、色々解釈されている。「鵄」を「鴟」としているものがあり、「鴟」の場合に、「横致」は偏が致→至ということなのかも知れない。標注古風土記p83によれば、千家俊信は「作横切鳥」と変えたらしい。
「功鳥」はイサオ鳥=勇ましい鳥で猛禽類であることを指している。これを「悪鳥」「凶鳥」と記しているものもある。悪鳥・狂鳥はひどいと思うが・・・。
--鴛鴦(オシ)…オシドリ。鴛はオシドリの雄、鴦はオシドリの雌
--鷠(ウ)…海鵜
--鳬(ケリ)…鳬は鳧の異体字。
--飛猑(ヒコン)…「猑」は康煕字典によれば「大狗(オオイヌ)」の事を指すが、ここの場合、獣+混で、獣と鳥の混じった動物と云う意味で用いているのではないかと思われる。

--蝙蝠(ヘンフク)…コウモリ。「蝙」は薄く平べったい事を表し、「蝠」は膨らんだ様子を表す。翼が蝙、胴が蝠、という事であろう。コウモリは古名「加波保利」(カハホリ)の転じた呼び名という。
(カハホリ)の語源は「川守」「蚊屠り」「皮張り」等色々説がある。
蚊を捕食することから「蚊喰鳥」とも呼ばれ、顔が鼠に似ていることから、飛鼠(ヒソ)・天鼠(テンソ)と呼ばれることもある。
---コウモリの古名カハホリについては、「川守」がふさわしいと考える。
家守(ヤモリ)・井守(イモリ)は古くから人の暮らしに有益な生物として親しみを込めて付けられた呼び名だが、コウモリも同様であろう。
音韻説上疑問を示す向きもあるようだが、呼び方は時代や訛で変化するものであり、音韻説などは一時期の根拠にしかならない。
福知山市大江町河守の辺りは古くは「川守郷」として知られ、これを(コウモリ郷)と呼んでいた。
ついでに、「山守」を大己貴神とすることがある。

--法吉鳥(ホッキトリ)…鶯(ウグイス)の古名。その鳴き声から法吉鳥という名が付けられたようである。

--[ム/月|鳥]…ホトトギス
--飛鼯(ムササビ)…平安中期以前にはムササビとモモンガを共にムササビと呼び区別していなかったようである。
--櫑(ライ)…酒樽。「鼺」(ルイ)がムササビであるから、誤記もしくは略記であろう。
--蝸・猧…読みは共に(カ)。蝸は(カタツムリ)。猧は狆(チン)。出雲国風土記抄第1帖p39では『字或作[獣偏に畾]作蝠』とあるが解説はない。「蝠」は(マムシ)。
--蝸・猧…読みは共に(カ)。蝸は(カタツムリ)。猧は狆(チン)。出雲風土記抄第1帖p39では『字或作[獣偏に畾]作蝠』とあるが解説はない。「蝠」は(マムシ)。
この件不明。
--獼猴(ビコウ)…大猿
--獼猴(ビコウ)・猕猴…大猿



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**魚介 [#g932c4a1]

--年魚…(アユノウヲ)とルビがある。鮎。1年で一生を終えることから「年魚」と記される。
秋口に下流域で産卵し、稚魚は海で育ち、暖かくなると元の川の中上流域に遡上してくる。
成魚は岩に付いた苔を食べよい香りを出すので「香魚」とも記す。
--伊久比(イクヒ)…(ウグイ)。方言ではハヤ。泳ぎが早いことによるという。

--螺子(ラシ・ニシ)…巻き貝のことであろう。特定はし難いがアカニシのことであるかも知れない。砂泥地の浅海で捕れ食用になる。
--海松(ミル)…塩水中で育つ海藻であるから、当時は宍道湖の塩分濃度が高かったことを示している。
寛永年間に宍道湖に出雲大川(斐伊川)の水が流れ込むようになり淡水化がすすんだ。


--蓼螺子(タデニシ)…出雲国風土記考証に『蓼螺子は長辛螺ナガニシのことであって、味が辛いから蓼螺子とも辛螺子とも書く』とある。イトマキボラ科の巻貝らしい。味が蓼のように辛いことから蓼螺子と云うらしい。(食したことがないので不詳)
--和令・和爾(ワニ)は鰐鮫ワニザメ(大きな鮫)のこと。
---鮫を中国地方では鱶(フカ)とも呼ぶ。鮫は細目(目が細い)ものを呼ぶとか、鱶は深い海に住むものを呼ぶとか、歯のあるものが鰐で、歯のないものが鱶であるとか色々いわれるが、鮫の種類も多く区別は地域で異なり曖昧。

--入鹿(イルカ)…イルカは古来貴重な食糧として食用されてきた。
--鯔(ボラ)…校注出雲国風土記では(ナヨシ)と読んでいる、(ナヨシ)は(ボラ)の若魚を指す。

--須受枳(スズキ)…鱸。いわゆる出世魚で成長に連れ呼び名が変わるが、個人的には若魚をセイゴと呼ぶ以外は知らない。
--近志呂(コノシロ)…子の代。若魚をコハダと呼ぶ。他にも呼び名があるようだが個人的には記憶がない。

--鎭仁(チヌ)…黒鯛(クロダイ)のこと。

--白魚(シラウオ)…河口で獲れる小魚。素魚(シロウオ)と似ているが別種。
共に河口付近に据えた「四手網」という独特な網を上下させて獲る。
---広島では五日市の八幡川や玖波の恵川で四手網が据えられた風景が見られた。山口では萩の橋本川で見ることが出来る。

--海鼠(ナマコ)…赤海鼠と青海鼠に分けられ、なぜか赤海鼠の方が珍重される。他に黒海鼠もいるが少ない。
海鼠の内臓をコノワタと云い珍味とされる。

--鰝鰕(エビ)…鰝(コウ)は大きいという意味を表す。ここでいう(エビ)は「大エビ」即ち「伊勢海老」のことを指す。
伊勢海老と呼ぶようになったのは室町中期から。伊勢からの出荷が盛んに行われるようになった事による。
---昨今大エビと称するのは輸入物のブラックタイガーのことで漢字では「牛海老」。

--志毘魚(シビウオ)…鮪・宍魚とも記す。マグロ特にクロマグロの成魚を指す。若魚はヨコワ或いはメジと呼ぶ。
マグロ(眼黒・真黒)と呼ぶようになったのは江戸期から。シビが死日に通じ武士に嫌われたからと云う。
「志毘」の語義は不明だが、「鮪」は「有」が供えるという意味で、祖霊に供える魚という意味を表し、「宍魚」はイノシシの肉に似た赤身肉の魚という意味を表している。
マグロはかつて、傷みが早く保存も効かず、すぐに味が落ちてしまう為好まれず、下魚とされることがあった。
北大路魯山人などは酷評している。(魯山人の評論自体愚説でしかないが)
--須我毛(スガモ)…アマモ科の海藻

--海松(ミル)…塩水中で育つ海藻であるから、当時は宍道湖の塩分濃度が高かったことを示している。
寛永年間に宍道湖に出雲大川(斐伊川)の水が流れ込むようになり淡水化がすすんだ。
--紫菜(シィサイ)…ムラサキノリ・アマノリ。海苔(ノリ)の古名。
江戸期より養殖が盛んに行われるようになり今のような板海苔が作られるようになった。
--海藻…ワカメの事「若布・和布」・海布葉(メノハ)とも云う。
--凝海菜(コルモ)…テングサの事。マクサ・ヒラクサなど種類があるが総じてテングサ(天草)と呼ぶ。トコロテンの原料となる。
--須我毛(スガモ)…菅藻。ヒルムシロ科或いはアマモ科の海草。海中で細い緑色の葉を伸ばし群生している。
--朝鮎…(アユ)とルビが振ってある。
・校注出雲国風土記ではこれを(フグ)としている。
・出雲国風土記考証p146では「朝鮐」と記し、朝は誤記でフグとしている。
--沙魚…ハゼ。
出雲国風土記考証では「鯊」と記しサメとしている。校注出雲国風土記では「沙魚」と記しサメと読んでいる。いずれも誤り。
--鮑魚…校注出雲国風土記でアワビ/「鮑」はアワビであるが、「鮑魚(ホウギョ)」は塩漬け魚のことで、「鮑魚」をアワビとするのは疑問。
--蕀の甲蠃(トゲノカセ)…(トゲのウニ)。ムラサキウニのことであろう。甲蠃(カセ)はウニの古名。
--甲蠃(カセ)…(ウニ)。バフンウニのことであろう。ムラサキウニより身入りがよい。
--螺蚄子(ラボウシ)…(カキ)。イワガキのことであろう。
--石葦(セアシ)…カメノテのことであろう。
--白具(オフ)…(シラガイ)。白貝。サラガイとも言う。校注出雲国風土記ではオオノガイとしている。
--凝海菜(コルモ)…テングサのこと。


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**鉱物物産 [#a5edb42e]
--水精(スイショウ)…水晶
--碧玉(ヘキギョク)…青瑪瑙(アオメノウ)


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---この辺りの読みの解説は[[『和名類聚抄』]]を参考にしている場合が多いようである。出雲国風土記から200年後に作られたものであり、書写の過程で誤記改竄も多々あるようであり、気を付けないと本末転倒となる。
即ち、出雲国風土記から和名類聚抄に収録されたものを、和名類聚抄に斯くあるから、出雲国風土記の記述は斯くの如しと云うような倒錯。


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