《日本海軍の終戦工作》 纐纈(こうけつ)
旧、日本帝国海軍と日本帝国陸軍の両者に対する、一般的印象というものには、
片や、東条英機、片や山本五十六、両大将に代表されるような違いがある。

この書は、未刊行資料、即ち、旧海軍省臨時調査課をベースとして活動した高木惣吉少将の記した資料、
通称「高木惣吉資料」を元に、戦前・戦中・戦後に渡る、帝国海軍の時局認識或いは政治工作に関して記した書である。

既に明らかにされているように、モンロー主義を捨て去ったアメリカ合衆国が、
アジアへの進出とりわけ中国市場に進出する事を目的として、
日米開戦をも辞さぬという強硬姿勢で対日政策を進めていた時代背景の中で、
この書で更に明らかにされているのは、

○旧陸軍・海軍は共に、大陸進出を目論んでいたのであり、
 片や満州、片や上海と、単にその対象地域が異なっていたに過ぎず、
 海軍側が非戦的であったという戦後の一般認識は誤謬に過ぎないこと。
○陸軍と海軍の対立状況。
○天皇裕仁が、開戦決定に深く関わっていたこと。
○敗戦に際しても、ポツダム宣言受諾の条件として、国体護持、即ち天皇制維持を確認する事が至上課題であったこと。

等であり、戦後日本の権力構造形成に旧海軍が深く関わっていた事をも明らかにしている。

纐纈氏は個人的面識も多少あるのだが、象牙の塔から窓の外を眺めるタイプではなく、
大学外に於いても、市民団体の反戦運動に深く関わり、広汎な活動を行っている事を記しておこう。

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