《日本古代の親族と祭祀》 上井久義
労作である。

第一章 女性と古代祭祀
第二章 家族と他界儀礼
第三章 神話と親族構成
の三部構成になっているが、中心となるのは鴨氏と秦氏の異なった氏族間の姻戚関係を
広汎な資料を元に明らかにし、三輪氏と秦氏の関連にまで論究している点である。
即ち、三輪の大物主と百襲姫の伝承、即ち箸墓伝説に繋がるものであるが、
これを、独自の観点から考察しているのである。

既に語ったことがあるが、出雲須佐郷の須佐神社、そのやや上流に秦氏の里がある。
遠賀川流域の新羅系氏族と豊前豊津方面の秦氏・漢氏との共同作業により宇佐放生会が行われる。
この様な、氏族関係に関して多くの示唆を受けることが出来るであろう。

多くは語るまい。一読を強く勧めたい。

筆者後書きを引用しておく。
「博物館を訪れて、見事に復元された土器を見て驚くことが多い。
小さな破片から、よくも原型が再現できるものだと感心させられる。
時にはほんの一部の小片だけが実物であったりすることもある。
古代文化についても、史料の小片をなんとかつなぎあわせて、それらしい風景を再構成したいものである」

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