《日本書紀研究》 三品彰英編
これは、関西方面を中心として、神話学・国文学関係者が集まって開催していた学習会の論文集である。
手持ちでは10冊あるが、いずれも膨大な分量の論文が掲載してある。(その後の刊行分については不知)

寄せ集め論文集であるから、まとまったものにはなっていないが、日本の古代史に関して、現在流布される
日本書紀関連の書籍のベースがここを源にしていると言っても良いであろう。
直接引用、孫引き等非常に多い。その程度には権威がある。

とまあ、先ずは紹介をしておく。
日本の古代史を、日本の古典文献を用いて論じる際には避けて通れない書である。
(漢籍の側から日本古代史を見返すというのは、本末転倒であろう)

中には納得できない内容や、論考不足と考えられるものも多々あるが、
それについては、時を追って追記する事にする。
第5冊を見ると
「神功皇后の系譜と伝承」(三品彰英)
「大帯日売考」(塚口義信)
という2論文が掲載されている。
今年(2000年)に入り、播磨関係に関するページを記しているのだが、これは天日槍・神功皇后・応神天皇
そして景行・欽明に関する論考を進めて行く為には、どうしても重要な地域であるからである。

この二論文は互いに直接の結びつきはないのだが、両論文に不足しているのは、遠賀川流域における、
神功皇后に関する論考であり、宇佐との関連である。更に言えば都怒我阿羅斯等と天日槍との関連である。

三品論文では、九州方面の論考自体少なく、塚口論文では、香椎宮に重点を置きすぎている。
無論、この様な論文形式自体、小考論文であるから、総合的な記述にまでするには、別書を用いるのであろうが、
両氏の基本的立脚点はこれらに示されている。

無論、津田左右吉の見識やいわゆる反映論等に比すれば、遙かにその質は高いのだが、
尚、論考不十分と私には思えるのである。
(続く)

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