《未知への痕跡》 E.ブロッホ
E.ブロッホの初期の小品集である。

後に哲学的議論の深みに入っていく前であり、難解ではない。
「ああ、ブロッホは元々物語り作家なのだな」とホッと出来るのである。
「贈りもの」という小品から、「手わたす」という小品への距離が、
そのまま、「ひどくわずか」という命題への道しるべになっているようである。

「希望の原理」は著名であり、又大部ではあるが、それはルカーチの「美学」と
対比しながら読み進めるべきものだろう。
両者の前提に、ヘーゲル「美学」を見据えておく事は言う迄もない。

それはともかくとして、私はこの小品集を、忘れた頃に開く。
どこからでも良いのだが、ぱらぱらと開いたところを数ページ読んで、
ウトウトと昼寝するのが好きなのである。


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