《上関原発問題》              
中国電力(株)が上関に原発建設を行おうとしている。
上関は古来、下関・中関(防府市)と並び、瀬戸内交通の要路であった。
以下の理由により、断固原発建設反対を表明する。

@ 年間電力消費量は、全国的に微減状態にある。
 夏季猛暑時数日のピーク電力消費量に合わせて電力開発を計画するのは間違っている。
  (夏の甲子園大会を盆明けに行えば良い)
A 原子力発電には、技術的に問題がある。その問題とは次のようなものである。
 チ 隔壁の経年劣化を構造上克服できていない。
 ツ 情報公開の原則が守られていない。
 テ 放射性廃棄物の処理技術が確立されていない。
  原発の発電コストが安いというのは、この廃棄物処理の為の費用が現状では
  計算不可能であるため、計算に入れられていないからである。
  処理費用まで含めた発電コストは相当高額になる事が予想され、
  これは、コスト負担を後年に残す事になる。
 ト 定期検査を外部企業に委ねているというが、お抱え企業であり、都合の悪いデーターを
  改竄している事実がある。

                  

B 放射能漏れが生じた場合、冷却水漏れの場合には、瀬戸内海全域に
 汚染が広 がる危険がある。内海であり、外洋との潮流交換には最低28年の年月を
 要するため、汚染の影響は数千万人に及び、致命的なものになる。
C 近くに岩国活断層があり、地震による建築物倒壊・放射能漏れの危険がある。
 周防灘特に国東半島沖で、過去大地震が起きた事実がある。
D 数年に一度大型台風が通過する場所であり、この際にも放射能漏れの危険が
 無いとは言えない。
E 年間を通じ、北西季節風が吹き、大気汚染は四国全域に及ぶ危険がある。
F 火災が生じた場合、対処の方法がない。陸上からの消化活動は、地理的・水源的に
 不可能であり、水上消火活動では現地到着までに時間がかかりすぎる。
 この間に軽微な火災が大規模火災につながり、原子炉溶解につながる危険がある。
F 賛成派は過疎対策を主張しているが、そもそも、原発建設に伴う協力金の支払は
 危険の代償費であり、この事が知られれば、さらに過疎を加速する。 過疎をくい止めるのは、
 人口増加のはずであるが、原発の近くに誰が好き好んで新たに移住しようと思うはずがない。
 協力金は、老人福祉に役立つだけで、過疎対策になるはずがない。
G 建設予定地は、知る人ぞ知る景勝地で、夏季にはキャンプ・海水浴の好適地である。
 過疎対策はこの自然条件を活用して行うべきであり、原発誘致等 という問題の多い方法に
 よるべきではない。
                   

 原子炉の核反応の結果生じる、プルトニウム239は、現在トン単位で備蓄されている。
これは熱中性子により核分裂を起こし易い性質を持ち、プルトニウムによる連鎖反応は制御が
難しく、エネルギー源として実用化は技術的に困難である。
 技術者の科学的興味で住民の安全を脅かすような開発努力など社会的背信行為である。
一方、核兵器としての使用は爆発的に連鎖反応が生じる事から、比較的簡単に行い得る。
239Puの半減期は24300年であり、現在備蓄中のプルトニウムが自然界の放射能レベルに迄、
自然崩壊が進むには十数臆年の歳月が必要である。
この間の管理備蓄体制等現実的にとれるものではない。又、これにともなう備蓄コストは
天文学的金額に上る。
 島根原発ではすでにPuの保管スペースが足りなくなり、処理不可能のため、
島根県に泣きついて、予定外の費用をかけて隣接地に保管スペースを建設中である。
原発運転を続ける限り、このようなことが繰り返し起きるのである。
 (北朝鮮の核ミサイルnodonが島根原発を攻撃目標としているというのは公然の秘密である)

 脳天気な学者の中には、核廃棄物はロケットで太陽に打ち込めば良いと言う者がいる。
そのロケットが大気圏内で事故を起こした場合どうなるか、子供でも解る。
 深海投棄・地下備蓄等を提案する者もいる。地球内部のマントル対流の動きが現在観測
できていない技術水準で、無責任としか言いようがない。
日本のような火山国ではマグマに侵食される危険が非常に大きい。

 この様な科学的前提に立って考えれば、現在尚原発でPuを発生させているのは、
核兵器保持の政治的意図があるとしか考えられない。
 それは即ち、次期侵略戦争の準備をもくろんでいるものであると断罪する。
原発賛成を唱えるのは、同時に、核兵器保持を唱える事と同じ意味である。
 「原子力の平和利用」と言うのは文部省や通産省が行う思想操作の為の虚言である。

 あたかも時代劇映画の悪徳商人の如く、札束をちらつかせながら、自らの思いを遂げようと
しているのが、今の中電の姿である。「人買い」ならぬ「環境買い」をしているのである。
 一体に、中電の電力コストは、他の電力会社に比べて高い。
それ故、原発開発に「遅ればせながら」熱心である。
ところが、この電力コストを下げる努力を行っているかと言えばかなり疑問がある。
 中電の下請け会社に中電工がある。中電の発注工事の過半はこの会社が請け負っている。
ところが、この会社は中国5県の中でも超優良企業である。つまり、中電の工事発注はまるで
競争原理が働いていないのである。
コスト低減努力をせずにおいて、コストを下げるという空名目で原発を作ろうとしているのである。

 更に県は一見中立を保つふりをしながら、原発設置を推進している。
平生の周防大橋の設置はその具現化である。この欺瞞的態度が問題を複雑にしているのである。
(公務員が島根原発を見学すれば、私的な観光旅行であっても交通費が援助される。
 むろん、そこではしつこい程に、原発の安全性と地域振興効果が宣伝されている。
 原発の危険性等どこにも書いてあるはずがない。)

 表で中立、裏で推進という態度が、原発設置に判断を下しかねている住民に「何となく賛成」の
姿勢をとらせ、それを推進派(実体は土建業者と後継者のいない漁業者)が利用するのである。
 県はとにもかくにも予算が欲しいのである。原発誘致をすれば、国から下賜される関連予算は
膨大な金額に上る。使途制限は緩い。その為に住民の安全を犠牲にしようとしているのである。
 これを乞食根性という。
原発が本当に安全なものであるならば、知事を含め県の担当公僕は、定年退職後には
上関でその余生を送る事を義務化すべきである。
 中電本社は被爆地広島にあり、従業員家族の中に被爆者も多数居るはずである。
本社近くの平和公園で毎年行われる平和祈念式をどう考えているのか聞きたいものである。
 原爆と原発は核分裂を利用する点で、本質的に同一物である。
全国の電力会社の内で、先ずは中電から原発に頼らない電力開発を考えるべきであり、
島根原発等の廃棄を率先して行うべきである。
 日置の風力発電等にさらに力を注ぎ、実用化を目指すべきである。
「実用化するまで電力消費の減少に協力してもらいたい」といえば、消費者は喜んで協力する
はずである。
 国、特に一部自民党議員の原子力政策、その先に見えかくれする原爆所持願望等に、
無自覚・安易に迎合するべきではない。

(追記1)
 この原稿を最初に作成したのが96年夏であり、その後「もんじゅ」や「ふげん」の事故が
表面化した。国の原発政策の実施中枢が事故を起こし、ひたすら隠し通そうとした事実が
明らかになった。東海村原発1号機は既にその設計寿命を迎えているにもかかわらず、
解体処理方法が確立していない為、非常に危険な状態で尚運転を続けている。
 設計段階では、解体処理方法は、運転開始後に確立できるだろうという、いかにも
いい加減なものであった。そのつけが今回ってきているのである。
原発寿命は通常30年と考えられている。これは鉄筋コンクリート建築物の寿命60年を前提に
想定されているが、これが果たして正しいかどうか誰も知らないのである。
 いずれ長崎軍艦島のような廃墟になるのである。
 東海村も三方町も、今原発誘致を行ったことを後悔しているのが実状である。

 今原発廃棄は世界的な動向である。日本政府は原発推進を国是としているが、
その前提は、
@ 電力需要は増加を続ける。
A 原発で電力需要をつなぎ、将来的には技術確立により、
 核融合発電を行うことが出来るであろう。
この2点である。
 ところが、既に記したように、電力需要は微減状態であり、核融合発電は、尚、夢の中である。
つまり前提自体がいい加減で、曖昧模糊としたものであることは明らかになってきている。

 この様な時代趨勢の中で、原発を新たに設置しようと言うのは、科学的態度とはいえない。
県や中電が連れてくる原発推進を支える「科学者」は本当の科学者ではないのである。
 丁度2次大戦末、アメリカでトルーマンが大統領選のために原爆投下を決定し、
科学者達が研究予算獲得のために、原爆開発に協力したのと同じ事が行われているのである。
 そのツケと被害は、被爆者が受けるのである。

明日の被爆者は、この文を読んでいるあなたか、あなたの子供達であるかもしれない。
そして、残念ながら、治療法はない。
(追記2)
先の京都会議で日本の二酸化炭素排出量の削減目標が6%とされた、会議中原発問題は、
ひらすら避けられた。一方で、この削減目標達成の為には、国内にあと20基の原発が必要であると
まことしやかに語られ始めている。まだこの事は余り語られていないが、いずれ県や中電がこの
削減目標を盾にして、原発推進の根拠にしてくることが予測される。
 この事に関して言えば、トラック、及びジェット機の排出する二酸化炭素量削減の方がはるかに
重要である事を記しておく。

(追記3)
私儀、両親・叔父叔母いずれも被爆者という、生粋の被爆2世である。
両親は10数年来毎日日課の如く病院通いを続けている。
色々な原因不明の症状が次々起こっている為である。
私の姉は早産で流産している。胎盤は真っ黒だったという。
健康そのもので病気知らずだった妹は先年突如白血病の症状が出たが何とか持ち直している。
小中高の同級生で白血病で夭逝した者が何人もいる。

チェルノブイリ事故で被爆した子供達が日本に里子に来て、森林浴効果で症状が軽減したという報道を聞き、
好きな山歩きに勝手な理由付けを得た気がして喜んでいる。
といっても、何の科学的根拠もない空念仏であることは重々承知している。
 既に記したように、現代医学で被爆症状は治癒できない。
被爆治療といっても、データー収集が主目的で、対症療法しか出来ていないのが現実である。

私は幼少時病弱で、毎年3ヶ月程度は病院暮らしをしていた。
今は健康そのものである。しかし、廻りを見ると体内に爆弾を抱えている様な不安感は常につきまとっている。
この不安感は、何世代続くか誰にも解らない。ほんの数秒の被爆がその後何十年も世代を越えて
つきまとうのである。
 かかる被爆の原因となる危険性を孕む原発設置など、断じて容認できるものではない。

仮に、私が白血病を発病したら、必ず日本国とアメリカ合衆国を相手に訴訟を起こすつもりでいる。
賠償請求ではない。一筆の謝罪文を求める訴訟である。
勝訴・敗訴は問題ではない。両国が今なお認めない戦争責任と原爆投下責任を問いたいのである。

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