句々迺馳神
(書紀)では句々迺馳。
(古事記)では、久久能智神と記される。
木の神である。
良く大木に注連飾りがされている。
巨木には神霊が宿るという、原始信仰である。

この信仰の原初は、生命に対する信仰であろう。
千年以上の生命を保ち続けた、巨木に対する畏怖心や憧憬心がこの巨木信仰を生み出したと考えられる。
又、この様な巨木には、他の植物が寄生していることが多い。
いかにも、生命を育んでいる姿に見えるのである。

伊勢神宮では内宮・外宮の本殿床下に「心の御柱」が立てられている。
長さ5尺、直径4寸の檜である。
別名「天御柱」「天之御量柱」「忌柱」等とも呼ばれる。
伊勢神宮のご神体は、普通ヤタノ鏡とされるが、実は、本来の御神体はこの「心の御柱」であり、
重要な祭礼はこの「心の御柱」に対して行われることが裏付けている。
これも巨木信仰にまつわるものである。
但し、切り取られた神木は、句々迺馳神ではなく、高木神、即ち高皇産霊尊に変化する。
句々迺馳神は、あくまで、山野にある生きた巨木に宿る神である。